添い寝してごらん…そう言われたらどうします? 冬眠する熊に添い寝してごらん '14.1.17

~してごらん。
誰かに、そう言われたら、あなたならどうします?
その言葉に従いますか?反発しますか?
上田竜也くんが主演するという舞台のタイトルを聞いた時
震えを覚えずにはいられませんでした。
お友だちのおかげで、1月17日の昼、ものすごい席で観劇できました。
もう1度見たいと思った『冬眠する熊に添い寝してごらん』の感想文。
ネタバレせずには書けませんし、勘違いも多い…かと思います。
しかも、無駄に長く、前後編の前編ですが、良かったらぜひ。

この日のお席は、初体験のコクーンシート。
舞台では御法度の「前のめり」が許されている席なのです。
舞台上の俳優さんの表情が肉眼で見えるけれど
舞台袖近くで演技されれると、前のめりにならないと見えない。
そんな席でした。

まず驚かされたのは、大仏。野原に祭られている…
お地蔵さんじゃなく、大仏?
何度となく読まれる般若心経に、心が凍りそうになったりもしました。

百年の時を超えて語られる、伝説の熊漁師役に、勝村政信さん。
上田竜也くん演じる、多根彦の祖父の祖父にあたります。
オープニング、獣の気配と足音を感じ、熊?…と身構えたけど
飛び出してきたのは犬でした。
人が演じてるのに、犬でしかない。すごい。。。

100年前を生きた熊猟師は、熊と、熊を神とあがめる人たちと契約を交わす。
契約が守られれば、熊猟師と彼の子孫たちには安泰と繁栄がもたらされる?
契約と言えば、血の…ですよね。
熊は神ですし。
熊猟師は言います。小熊は狩らない…と。
そして、犬。狩りにはなくてはならない相棒であり、猟師は犬を大切にする。

オープニングの明治の時代から、急に時代が100年後に…
埠頭に登場するジャージ姿の男、井上芳雄さん演じる川下兄の一。
ライフル射撃オリンピック代表。さすが、伝説の熊猟師の子孫ですね。
一は、ライフルの稽古と称し、犬を(野犬、のら?)を撃ったりも…
猟師の子孫として、あるまじき行為です。

兄に憧れ、兄のためならなんでもやる弟、多根彦が上田竜也くん。
エリート商社マン~だそうですが、そんなにおいがしない。
24歳なのですが、邪気がなく、子どもっぽい感じです。
多根彦は、無人のベビーカーを押して、埠頭で待つ兄のもとにやってきます。

なぜベビーカーを押してくるのか…
川下家には、25歳で一子をもうけよ…というおかしな家訓がありました。
兄の一は30歳、一子(嫡子)であるのに、家訓を破り、
お兄ちゃん大好きの多根彦は、兄の代わりに、家訓を実践しようとしている。
多根彦には、結婚を考えている彼女がいました。

なぜ25歳なんだろう…ずっと頭にひっかかっていました。
早すぎても、遅すぎてもいけない。
観劇後に調べたのですが、野生のヒグマの平均寿命は、25歳…
埠頭で、ふざけて抱きあたりして、じゃれあう、一と多根彦兄弟が
犬にも見えたけど、
タイトルからも、熊の血が流れてるのかな~と思ったりもしたので
この歳の一致には、ドキリとしてしまいました。

多根彦の恋人であり、女流詩人にひばりを演じるのは、鈴木杏ちゃん。
犬をうたう犬詩人であるひばり。
大きいことは詩によめないけれど、”大”に"、"を打ち”犬”とすれば
自分に引き寄せ、自分の事として詩にできる
そんなふうに言っていました。
ひばりは、肉感的で、狂気もまとった詩人で、子を産むことが似合わない。
幸せの対局にいる女性を、杏ちゃんは、ダイナミックに演じていました。

ひばりのまっすぐでつややかな髪の右半分には、金の毛が混じっていました。
父から受け継いだ血。
その父とは、金の毛をした犬である…と。
犬は親子でも契ると言います。
ひばりには、父も母もおらず(出て行ってしまった?)祖母と暮らしていました。
しかも、ひばりと祖母は血がつながっていませんでした。

恋人である多根彦が、ひばりの祖母に挨拶にきます。
ベビーカーを買った…というと、結婚前のふたりが、そんな仲になっていたのか
…と、おばあちゃんは嘆きますが、
ひばりは、絶対にそんな(妊娠)ことにならないよういしている…と言います。
多根彦が、愛しているから結婚したいと言っているのではないことを
ひばりは、感じていたのでした。

多根彦の祖父と兄と、ひばりと祖母で会食をしようと言うことになります。
回転寿司やさんで!
舞台と花道に、回転寿司のコンベアがぐるりと設置されたのには驚きました。
コンベアの中のお客さんたちは、寿司のネタかシャリの役でしょうか(笑)

待ち合わせ時間よりも早めに来店した一とひばりは、
たまたま隣り合わせとなり、回る寿司を選びながら食べているうちに意気投合。
名前も知らぬ間に恋に落ち、ふたりで恋の逃避行。
一もひばりも、はじめてほんとうの恋をした…ということなのかな。

この舞台は、15分の休憩時間をはさんで4時間の長丁場です。
多根彦たちの時代と、100年前の明治の時代を、行ったりきたりするからか
全く長いと感じませんでした。

燃える水、石油にわいた明治時代の人たち中に、熊がいました。
でも、だれも不思議にも思わない。人の中にとけこんでいます。
タイトルにも出てくる熊、冬眠する熊ってなに?だれ?
その疑問が解決されないまま、舞台は進んでいきました。

人の誰かが呪われなければいけねえんだ。
このセリフは、多根彦の祖父の祖父である伝説の熊猟師が言った
…と思っていたのですが、パンフでは、祖父のセリフになっていました。
呪われる役割を担うのは、熊猟師、多根彦たちの家系ということなのかな。
その呪いを避けるための、あの奇妙な家訓であったのかも?

伝説の熊猟師は、その腕を見込まれシベリアにわたります。
犬に犯される女性が出てきます。
獣と交わる。熊と交わった女性もいたでしょう。
そして生まれた半獣の子どもとその子孫たち。
女性を凌辱した犬は、文字通りの獣であったかもしれないし
外国人、異教徒、あるいは、権力をふりかざす者だったかもしれません。

呪われた血をついだ子どもたちが交わる時、悲劇がおきる。

兄に恋人を奪われた多根彦は、この世を憂い、自殺を繰り返しますが
死にきれず、少しずつ、こわれていきます。
自分がエリートである…と言う多根彦ですが、そうなのかな?
そうありたいと願っていただけじゃないのかな。
大好きなお兄ちゃんのために、自分が代わりに家訓を守ろうとしたのに
他の誰でもない兄に、ぶちこわされる。

多根彦は、恋人にフラれたことに打ちのめされているンじゃない。
兄に裏切られ事がたえられなかった。。。

以前…ふたりでじゃれあった埠頭で、兄と電話をする多根彦が、
兄へ言葉を投げるたびに、少しずつ少しずつ壊れていく。
自分の発した言葉で、自分自身の精神を切り刻んでいく様で震えました。
少し上を向いた多根彦の目には、眠れない…という言葉通り
真っ黒なクマが。。。

多根彦の言葉は、呪いでした。
家訓を守り続ければ、川下家は栄える。
守られなかったならば、その世代は呪われる~ってことなのかな。
多根彦の父と祖父が、この物語に登場しないのは
そのへんの理由で20年生きられなかった~のかもしれませんよね。

そうとは知らずに、呪いの言葉を発し続ける多根彦の目は落ち窪み、
それでいて、恍惚とした表情をしていました。
どれだけお兄ちゃんが好きなんだよ、このひとは…

ひばりも、お父さんを知りたいと願っていました。
2頭の犬に連れ去られたひばり。その2頭に犯されているようにも見えました。
犬は親子でも契ると言いますから。
ひばりは、心から愛してくれる誰か(なにか)を探していたのでしょうか。
多根彦が、ひばりを愛せたら、家訓は守られ、呪われる事はなかったでしょう。
でも、多根彦が愛していたのは、一でしたからね。

この物語がなにを言いたかったか…
それを考えるのは、てるひには無理そうです。
では、誰が1番幸せだったのか…
観劇直後は、多根彦だと思っていましたが、ひばりかもしれません。
ある意味、一も、幸せだと言えるでしょう。

そのあたりのことや、この舞台を見て、なにを受け取ったのかを
物語の結末にもふれながら、記事をわけて書きたいと思っています。
最後にひとつだけ。若い3人の役者さんは、3人ともすごかったです。
お互いの力を引き出しあってたンじゃないかな。
そんなふうに感じました。

ここまでおつきあいくださって、どうもありがとうございました。

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