守るという事を考えた『パーフェクト・ブルー』宮部みゆき 

好きな色は?…と聞かれれば、迷わず「青」と答えてきました。
空も海も、空気も…大好きなものは、みんなあお。
いろんな表情を持つ青が好きでした。この本を読むまでは。。。
大好きな作家の作品なのに、なぜか読んでいなかったこの本は
氏のはじめての長編作品だそうですね。
今から20年以上も前に書かれた『パーフェクト・ブルー』の感想文です。
良かったら、ぜひどうぞ。

2012年10月、ドラマ化されましたよね。そのドラマにハマっていた
…と言うお友だちから文庫本を借りて、まさに一気読みしちゃいました。
やめられなかったの(ゆえに。寝不足・笑)
この作品、2010年に映画化もされていたのですね。
どちらの映像作品も見ていないので、純粋に本の感想を書きますね。

父の経営する蓮見探偵事務所で、調査員として働く加代子は
家出した師岡進也を見つけて、家に連れ戻すという仕事を依頼されます。
バイクを買うために、バーでバイトをしていた進也には、
将来を期待される、超高校級のピッチャーの兄・克彦がいました。
高3の夏の大会を控えた兄の障りにならぬよう
誰にも気づかれぬよう、弟を連れ戻してほしいとの依頼だったのです。

克彦と、所属する高校、野球部へのいやがらせか…
ピッチング練習に使われる打者人形が盗まれ、
焼き捨てられるという事件があったばかりでしたから。

加代子の相棒兼、用心棒は、元警察犬のマサ。
このマサの語りで、物語は進んでいきます。

進也は帰る事を承諾するのですが、
進也の父からは、草木も眠った頃に帰るように言われ…寄り道をした、
打者人形焼き捨て事件の現場で、人が焼かれる現場に遭遇します。
炎に包まれていたのは、兄の克彦でした。
焼き殺されたのではなく、死んでから焼かれた…
誰が殺したのか?なぜ焼かれたのか。。。

犯人は、あっさり見つかります。
同じ高校の野球部だった山瀬浩。
山瀬は、交通事故の後遺症で、手足の震えがおさまらず、
野球をあきらめ、高校も中退。家も飛び出し、すさんだ生活をしていました。
打者人形焼き捨て事件も、山瀬の仕業でした。

自分より才能がある克彦への恨み?
大好きな野球ができなくなった事への、持って行き場のない悲しみ?
山瀬は、遺書を残し、風呂場で溺れて死ぬ道を選びました。

克彦は、山瀬から脅迫状を送られていました。
夏の大会を辞退しないと、打者人形の次は、お前が焼け死ぬ事になる…と。
その脅迫状のことは、進也も知っていました。
克彦は、家出した深夜とも会っていて、脅迫状の事も話していたのでした。
友人だった山瀬を救いたい。話をして改心させたい
その気持ちから、山瀬の居所を弟の進也に探してもらってもいた矢先の
哀しい事件でした。

語りがマサから、ひと(笑)の木原と言う男へと変わります。
製薬会社のうだつの上がらない課長補佐。
その製薬会社、大同製薬は、ある男から強請られていました。

ナンバー・エイト。大同会社の現専務が、今では使用を禁止されている薬を、
子どもたちに飲ませて、実験をしていた…と言うのです。
ナンバー・エイトを飲まされた子どものひとりが死んだ。。。
アメリカで開発中だった、ナンバー・エイトと同じ成分の薬に
非常に危険な副作用があるとの論文が発表され、
大同製薬は、実験を打ち切り、全てを闇に葬ったのでした。

ナンバー・エイトは、とても綺麗な、目にしみるような青だった…
この件を読んだ時「もうブルーハワイは飲めないな」と思いました。
綺麗すぎるものは、禍々しい。
目にしみるような青い色の空や海を見た事はありません。
人工的だからこその青。完璧な青は、自然界には存在するんだろうか。。。

克彦が亡くなり、焼かれた遺体を見た日、母は
「あなたが死ねばよかったのに」
息子である進也に、そんなひどすぎる言葉を投げつけました。
少しずつ心が壊れ、克彦と進也の見分けもつかなくなり入院します。
平凡に生きてきた母にとって克彦は、思いがけない大きな贈り物でした。
大きすぎる贈り物。それを守るためにおびえるようになっていった母。
哀しいですよね。

克彦を殺した山瀬の遺書の不審点に気づいた加代子たちは、
遺書を書いたのは山瀬ではなく、山瀬は殺されたのであり
克彦を殺した犯人も他にいるのではないか…と思いはじまます。
溺れ自殺…聞いた事ないですよね。

犯人死亡で警察の捜査本部は解散しています。
加代子は、進也の父に、自分たちに再捜査を依頼してほしいと頼みます。
殺された息子、大好きだった兄を奪われた弟・進也。
その息子の死から精神のバランスを崩した母。
「自分たち家族にこんなひどい仕打ちをした人間を見つけてほしい」
調査の手伝いを進也にさせてほしい
そう…父は、頼むのでした。

大同製薬を脅迫していた男が名乗っていた名前は、
5年前にナンバー・エイトの副作用で亡くなった少年の名前でした。
脅迫者は、克彦にも接触をしていました。
その男の正体が少しずつわかっていきます。
同時に、克彦が、ほんとうに正義感が強く、やさしい青年だったことが
わかっていきます。そんな青年が殺されたなんて
その理不尽さに憤りを感じながら、読み進めました。

加代子、進也たちが亡くなった少年の名を語った脅迫者にたどり着いたのと
同じ頃、ナンバー・エイトの実験をしていた大同製薬側も、脅迫者の正体と
加代子たちが、同じ男の事を調べている事実を知ります。
脅迫者もそれを追う者たちも、一緒に始末をしようと動き出すのでした。

亡くなった少年の名を語っていた男が殺されます。
そして、加代子や進也たちも殺されかけるのですが、
脅迫者との窓口の役目を負わされていた木原により、難を逃れるのです。

木原の妻はオートマ車の暴走で事故死していました。
妻の死は運が悪かった。リスクのひとつでしかなかったと言わたのです。
そう…製薬会社側は、ナンバー・エイトの副作用で亡くなった少年の事も
運が悪かっただけ、データのひとつとして扱い、罪の意識があまりにも薄い。
ひとの死がデータのひとつ。。。
木原は、やりきれない思いだった事でしょう。

ナンバー・エイトは、ドーピングを見つけるための薬でした。
そのために、子どもたちは、筋肉増強剤も飲まされていた。
克彦も、山瀬も、死んでしまった少年も。
脅迫者は、会社側だけでなく、克彦の事も強請ろうとしていたのでした。

強引な書き方ではあるものの…この男(結城と言う名前でした)が、
克彦も山瀬も手にかけたかのように、読者をひっぱっていくのですが
実は、結城は、お金と評判が欲しいだけの小さな男でした。
犯人は別に。。。

映画化された時には、その絵から、犯人がすぐわかってしまっていた
そんな感想を書いていた人もいました。
犯人は、誰を守りたかったのでしょう。

もとはと言えば。グランドを貸すという慈善の影で、
子どもたちに投薬実験を行っていた会社が悪い。
亡くなった少年もいるし、
山瀬もまた、副作用に苦しめられたひとりだったのです。

真犯人は、自分の大切なものを守りたかった。
データにされた子どもたちと親たちに、自分たちと同じ思いをさせたくない
そうも思った。
でも、やり方を間違ってしまったのです。

亡くなった少年の家を訪ねた時のマサの言葉が、すごく印象に残っています。
人間のつくりだすものの半分は、あとの半分のものが原因でおこる
トラブルを解除するために使われているのだ。

薬もそのひとつなんでしょうね。

この作品は、犬のマサと製薬会社側の人間である木原視点と
2つを切り替えながら進んでいきます。
視点を切り替えて書くことは、難しいですね。
全てマサ視点で書いていたら…そんなふうに思ってしまったてるひでした。

加代子と言うキャラは、あまり魅力的とは言えなかったけど
犬のマサと、家出常習犯の進也は、おもしろいなと思いました。

最近。本を読む事が、少し苦痛でした。
本のblogを書くことは、もっと…
でも『パーフェクト・ブルー』を、まさに一気読みして、
読書の楽しさを思い出しました。
その気持ちを書き残したくて、久しぶりに読書日記を書いてみました。

最後までおつきあいくださって、どうもありがとうございました。

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