一歩も引かない生き方 ぼくに炎の戦車を 12.11.12 赤坂ACTシアター

精神の闘いから ぼくは一歩も引く気はない
ウィリアム・ブレイクの予言詩「ミルトン」の序詞の一節です。
そんな事ももちろん知らず、ただタイトルに魅かれて…の観劇でした。
11月13日(火)草なぎ剛くん主演「ぼくに炎の戦車を」を見てきました。
てるひが、覚えておきたいためだけの観劇感想日記。
文章力がないため、ネタバレせずには書けませんが、良かったらぜひ。

会場に入ると、開演前なのに、舞台には役者さんが。。。
もうすぐ収穫の時期なのかな。
1924年、朝鮮、京城近くの地方都市の城門の前から、物語は始まります。
この日の席は、1階センターブロックの通路横でした。
音楽が鳴り響き、民族衣装をまとった旅芸人たちが、城門(舞台)をめざし
(客席横の通路を)歩いていきました。

豊穣を祈ったりする芸を見せる事で、お布施、食べ物、一夜の宿を得る。
流浪芸人である男寺党の芸は、綱渡り、皿回しのような曲芸もあり
太鼓などをたたき、踊る舞踏もある。
長い紐がついた帽子をかぶり、その紐を操る芸も見事でした。

会場の通路を歩き回り、お布施を集めたりもしていて、
わたしの斜め後ろの女性も、お札をかざして呼び、渡していました。

男寺党が芸を披露していると、白磁を盗られた草なぎくん演じる直輝が
盗人を追いかけてきます。わたしの横を草なぎくんが走っていきました。
男寺党の演者の淳雨が、盗人から白磁を取り返しますが、割れてしまって。。。

仲間が嫌う日本人の直輝に、淳雨は、なぜか心惹かれ、
代わりの白磁を持って、直輝を訪ねる事から、ふたりの友情が始まるのでした。
白磁は、日用品であり、安価なものだけど、直輝は、100年、200年後には
芸術品になる…と信じていて、朝鮮の文化の素晴らしさを称えました。

直輝と淳雨。国籍の違う青年の友情を軸に物語が進むのかと思いきや
もう一本の交差する物語がありました。
淳雨が訪ねて来た日に、直輝を心配してお弁当を届けに来た妹、松代。
松代は、広末涼子さんが演じていました。

直輝は、朝鮮語が話せましたが、松代は全く…で。
身振り、手振りで、淳雨とコミュニケーションを取ろうとするのですが、
オーバーすぎて。笑いを取りたいんだろうけど、浮いている気がしました。

朝鮮のセリフが多いため、舞台の脇に字幕を映すスクリーンがありました。
セリフを確認しながらの観劇は、ちょっと疲れましたね。
潔く字幕にはたよらずに、表情やアクションと、日本語のセリフだけで
ストーリーを追いかけて楽しむ方が良かったかもしれません。
そうなると、松代のオーバーアクションは、それはそれでイイのかも?

淳雨は、親方からその職を譲られる事になるのですが、
先輩からは、ねたまれることに。。。
淳雨演じる、チャ・スンウォンさんは、188センチと背が高くカッコいい方でした。
嫌味な先輩は、背伸びをして話したり、芸もだけど身長でも負けてない
…と言いたかったのかな。

アドリブなのか、オーバーすぎるアクションや、背伸びなどの小芝居
乱暴に相手をたたく、どつくなどのお笑いが多すぎて
数秒後のシリアスな会話に、頭が切り替えられなかったりもして
ついていけないな~と思うシーンが多々ありました。

笑わせようと作られているので、確かにおもしろいのですが、大声で笑う方が
たくさんいて、芝居慣れしていない私は、ついていけなくて(涙)

直輝と淳雨と物語にクロスする、もうひとつの物語の主人公は、
夢を求めて朝鮮にわたってきた日本人、松代の夫でもある清彦です。
歌って踊る女給さんのいるナイトクラブ(?)のオーナーでもある清彦は、
足が不自由でした。

幕間、化粧室から席に戻ると、物語は進んでいて。
淳雨を「兄さん」と慕う、1番若い青年が、綱渡りの練習をしていました。
彼は、この地の貴族の娘に好かれて、しつこくつきまとわれていました。

男寺党の前親方は、実は、朝鮮を占領している日本のトップを狙う政治犯で
清彦の店にたびたび顔を見せ、活動資金の無心をしているようで。
清彦は、日本に離婚した奥さんと子どもを残して、朝鮮に来て
お金儲けにばかり邁進してる人なのか…と思いきや、実は。。。
そんな清彦を、直輝は、よく思っていませんでした。

朝鮮の文化を大切に思う直輝と、淳雨は、思いを語り合い、尊敬しあい
義兄弟の杯を交わすのでした。
男寺党は、家族から切り捨てられた者たちが、家族として助け合ってきたので
淳雨は、心から信頼する直輝の事も、友とも家族とも思っていたのでしょう。

男寺党のもとに「娘が妊娠させられた。相手は誰だ?」と乗り込んできます。
娘が恋したのは、1番年若い、綱渡りをしたいと言っていた少年でした。
男寺党は、女性と関係を持つ事はご法度でした。
親方である淳雨は、袋叩きの上、放り出すとの掟に従うことを選びます。

掟とはなんだろう。守るためのものじゃないのか…
たった1度の掟破りも許さないのか。
少年には男寺党しか居場所がなく、女性との事の真偽も定かではないのに。
袋叩きにあう少年よりも、淳雨の方が、いたそうでした。
たぶん、叩いている仲間もいたかったと思います。
見てるわたしたちも。

そこに居合わせた直輝は、淳雨をせめ、義兄弟の縁を切ると言います。
そして、傷ついた少年をつれて帰るのでした。

直輝は、訪ねてきた淳雨に罵声をあびせ、義兄弟の縁を切ると言います。
少年は、あんなひどい目に合されても、淳雨の恨む事もなく
男寺党に戻りたいと懇願します。綱渡りをやりたい、こんなに上手なんだよと
歩いてみせた屋根から落ちて、命を落としてしまうのです。

淳雨は、自分が綱渡りをする。だから、見に来てほしいと直輝に言います。
練習では1度も成功した事がないのに…です。
弔いのためならやめろ…と仲間に言われますが、聞き入れません。
先輩党員は、ここでも、背伸びして、淳雨を説得したり、
シリアスなシーンでも笑いを取ろうとする演出?アドリブ?は、
やっぱりどうしても、わたしには、理解できませんでした。

淳雨に危険を冒させたのは、誇りでした。
最下層に位置づけられ、墓を持たず、亡くなっても石を積むしかなかった彼ら。
「行かない」と言った直輝も、淳雨の姿勢に心うたれ、
もう一度、義兄弟の契りを結び直すのでした。

一方、松代は、夫と別れ、幼なじみと日本に帰る事に決めるのですが
そこへ、憲兵が乗り込んできます。
男寺党の元の親方が、政治犯としてつかまり、
清彦が活動の資金源である事をつきとめての事でした。

必死に明彦をかばう元親方。
明彦は、男寺党の出身で、親方の事を兄と慕っていたのでした。

清彦を追いかけて日本からやってきた息子との、本気の親子げんか。
目の前で愛するひとを亡くした悲しみや、
それでも、生きるために「わたしは、日本人です」と叫んだと言う過去の激白。
その時に憲兵(?)に撃たれ、片足の自由恋人を失った清彦でした。

清彦役の香川照之さんの演技は、すばらしかったですね。

清彦が朝鮮を離れ、日本にわたり、日本人として生きてきたのは
祖国のためだったのでしょうか。
義兄の活動に資金を流していた事を認めた清彦も、連行されます。
松代は、日本には帰らず、清彦の帰りを待つ事に決めるのでした。

清彦の店で働いていた女給さんたちにも、それぞれの物語がありました。
たくさんのものを背負って生きている姉さんたち。
朝鮮の男性と生きる事を決めた人もいました。

うん…でも、サイドストーリーが多すぎな感が否めませんでしたね。

直輝は、勤めていた小学校を辞め、陶工としての勉強の旅に出ることに。
淳雨たちも、この地での興業を終え、次の地へと旅立つ事になりました。
それぞれの新しい出発。

白磁は、普段使いの陶器であり、なんの価値もないと言われていました。
直輝は、100年後、200年後には、価値が出るはずだと言いました。
同じように、淳雨たちの芸も本物だ、すばらしいものだ…と。
美しい白磁は、男寺党の芸とも通じるものがあるんですよね。
そこに身を置く淳雨は、100年後の事よりも今を生き抜く事が大切でした。
文化として、芸術して残したいと思ったわけではなく、
生きるために磨いた芸が、結果として、そうなっただけのこと。

国境を越えた兄弟愛、夫婦の愛。
守るべきもののために、鬼にもならなければならない時があること。
目標を、夢をもつこと。
いろんな事を考えました。

直輝と淳雨の旅立ちを、青い空が祝福していました。
印象的なラストでしたね。

  ぼくの燃える黄金の弓を
  希望の矢を槍をぼくに
  ああ 立ちこめる雲よ 消えろ
  炎の戦車を ぼくに与えてくれ
  精神の闘いから ぼくは一歩も引く気はない
  この剣をぼくの手のなかで眠らせてもおかない

精神の闘いを続けることが、人として、生きる事なのかもしれません。
美しい明日を勝ち取るために、闘い続ける。
大切に生きること。それが、ほんとうに大切なんだと思います。

てるひが見てきた舞台を覚えておきたいだけの感想文に
最後までおつきあいくだっさって、どうもありがとうございました。

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