お前しだいだ『鬼の市』

節分の夜。健太の家では、豆まきをしません。
しないどころか…毎年の節分には、鬼を迎える家でした。
鬼様をお迎えして、ごちそうでもてなし、
次の朝、家と村中の病気や災いを持って行っていただく。
もうすぐ6年生になる健太は、お迎えした鬼の影を見た…ような気がしました。姪のしおりも見たらしい?
ねえちゃんは、うちの先祖は鬼だと言うし。
そんな事が皆に知られたら、友だちがいなくなっちゃう???
『鬼の市』鳥野美知子 作 たごもりのりこ 絵 岩崎書店 2007

今年の節分までに、どーしてもこの本の記事を書きたかったのです。
「福は内、鬼も内」と豆まきをする家もあるそうですが、
健太の家は、鬼を迎える家なので、豆まきそのものをしないのです。
鬼迎えを取り仕切るのは、その家の跡継ぎなのでした。

去年の秋、健太よりも15歳年上のねえちゃんは、ふたりの子ども・しおりと雷天をつれて、家に帰ってきました。だんなさんが事故で死んじゃったから。

鬼がこわい…と泣くしおりを便所に連れて行った健太は、
鬼を案内した仏間に、鬼はいないのか、それともいるか…見に行くはめに。
仏間には角のはえた鬼ではなく、しおりのパパの誠二さんがいました。
去年の秋、事故で死んだはずの…
しおりは、誠二さんが持ってきた鈴カステラを食べて、ひきつけをおこします。
とうちゃんとかあちゃん、ねえちゃんは、しおりを病院に連れて行く事に。
おかげで。翌朝の鬼さんを送する役目が健太に回ってきてしまったのです。

鬼さんを川まで送る。その間は、口をきいてはいけない。
鬼迎え、鬼送りは跡継ぎの役目なので、健太が行かなければならないのです。
川のそばで、健太は、禁を破り、思わず…声を上げてしまいました。
やぶれかぶれ?健太が鬼に「おーい、鬼。しおりを助けろ」と声をかけると
その声に応じて、鬼が返事をしました。

行けば、見たくないものを見、知りたくないことを知る。
でも行かなければ、しおりは助からない。鬼に、助けに行くのか行かないのか…そう聞かれ、行くと答える健太でした。
生きていれば、見たくないものを見なければならない時もあるし
知りたくない事に首をつっこまなきゃいけない事もある。
それでも、人は生きていかなきゃいけないんですよね…
鬼は言います「お前しだいだ」・・・と。

健太の目の前に、大きな、赤銅色の鬼が姿を現しました。
鬼におぶわれて向かったのは、鬼の市。
鬼と死者のフリーマーケットのような場所。
死者は、棺おけに入れてもらった品と持たされた六文銭で買い物をする。
健太は、鬼に死者の印をつけてもらい、案内役の人魂と六文を渡されて
ひとりで、鬼の市で、しおりを探す事になるのでした。

鬼の市で、雀っこ餅を売っていたカンタが、一緒にしおりを探してくれることに。
カンタが売っていた餅は、香ばしいにおいがして、ほっぺが落ちそうでした。
でも。鬼の市で売っている食べ物は、死者の食べ物。
食べてはいけない…と、赤鬼に言われていたのでした。

鬼の市の看板は、なんだかヘンでした。
んどうけばお、うゆじんまくに、えおがに。そう、さかさ言葉なのです。
キツネ文字と言うらしいのですが、さかさ言葉を操るひとを、知ってるぞ
。。。ここでは、関係のない話でしたね。

健太は、パジャマ姿で、カードを売っていた子どもから「お前の守護神」
そう言われて、赤鬼のカードをもらいます。
やっぱり。健太の祖先は鬼なのかな???

やえおがにで、ひよこのパジャマ姿のしおりの似顔絵を見つけます。
このやえおがには、かわいい女の子は、タダで書いているらしい?
しおりは「青鬼さんにつれていかれちゃった、助けて~」と健太に言いました。
しゃべる似顔絵。さすが鬼の市?
カンタに、青鬼につれていかれたなら、食われちゃうかもしれないと言われ
あせる健太。
カンタに助太刀をお願いして、青鬼の住処に連れて行ってもらいます。
そこにいた青鬼には、右腕がありませんでした。
なんでも…鬼退治で有名な渡辺綱に切り落とされたのだとか?
渡辺?健太の苗字は渡辺でした。綱はぼくのご先祖さま???

しおりを助けようとするものの、健太とカンタも青鬼につかまってしまいました。
賽の河原でえ、石をつまされますが、うまくいきません…
青鬼は、なんともおそろしげな血のワインを鍋で煮立て始め
どうやら…健太たちを食っちまおうとしているらしいのですが
さびしんぼーな青鬼さんは、ご学友も欲しがっているらしいのですが。。。
食われるのと友だちになるの?どっちが男らしい生き方か?

健太は「切り落とされた腕を返しに来た」と作り話をして、鬼をだまし
そのすきに、逃げ出す事に成功します。
しおりをおぶって走る健太。騙された事に気づいた青鬼が追いかけてきます
その時。1番鶏が鳴きました。動かなくなった青鬼…
夜が終わる?時間切れでしょうか
鬼の市に戻ってくると、ほとんどの市は店じまいを始めていました。

鬼の市の入口で、赤鬼が待っていました。
亡くなったおじいちゃんも一緒でした。
おじいちゃんは、なつかしそうに、カンタも抱きしめようとします。
カンタは、子どもの頃に亡くなった、おじいちゃんの幼なじみでした。
子どもの時に亡くなったから、子どものまんま。
おじいちゃんも、カンタを助けたくて、鬼におぶわれて、鬼の市に来たことがあったのでした。っでも、カンタを見つけることはできなかったのです。

もうすぐ夜が明けます。
健太は、また、赤鬼におぶわれて、鬼の市を後にします。
気がつくと。鬼送りをしにきた川の近くに立っていました。
男の子にもらった赤鬼のカード。それは、もともとは健太のものでした。
入院していた時に、あの子が持ってたレアカードと交換してもらったのです。
あの子は病院で息をひきとった?
健太は、一緒に遊んだ日の事を思い出して、思わず…涙…

家に帰ると、しおりは、病院から戻ってきていました。ハシカだったようです。
そう。青鬼という病魔からしおりを守り、死者の国から連れ戻す事ができた。
死者の国の食べ物は、どんなにおいしそうでも、
親しい人からもらったとしても、食べてはいけないよね。
健太は、赤鬼に来年も待ってるよ、でも、誰もつれてこないでねと頼みました。
守護神である赤鬼は、いつも健太を守っているのですね。

お前しだいだ。そう…お前=自分しだいなのです。
誰かが何かをしてくれるわけじゃない。自分しだいなのです。
そして。なにかをしようとすれば、知りたくない事を知る事になったり
見たくないものも見なければならない事もあるでしょう。
でも。なにもしなかったら、動かなかったら、なにも得る事はないのです。
自分しだい…
そのとおりだ。ですよね?

節分の夜は、早く寝た方がよさそうですね。
夜中に起きていると、ろくなことがない…らしいからね。

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