俺の走る道 『一瞬の風になれ 3-ドン-』

イチニツイテで始まり、ヨーイで悩み、ドンで真実のスタートを切った新二。
陸上選手として、人として。これからいろいろな事を経験してくンだろーな。
青春をかけて打ち込める事に出逢えた新二と連。
意識し、刺激しあい、一緒に走り続けたいと思ったふたりの物語の完結編。
『一瞬の風になれ 3-ドン-』佐藤多佳子 講談社 2006

これをやっていくんだ。10代の頃に、そんなふうに思えるなにかに出逢えたら、幸せでしょうね。一生の宝物になるでしょう。
走ることは、ある意味、単純で、広い範囲のひとができるスポーツですよね。
始まり(スタート)で走り始め、終わり(ゴール)でフィニッシュする。
なんと言うか、人生そのものみたいな感じさえする。
風を感じて走り、自らも風になる。
新二も言っていますが、カッコイイなぁ~と思いました。

高校で陸上を始めた新二は、1年生の頃は、試合のたびに
精神性の下痢を繰り返す、ナイーブな面も持っていました。
でも。選手としての強さ、自覚が備わってくるにつれて、精神的にも強くなり
部長に就任してからは、人としても、加速度的に成長していきました。

砂浜を全力で走る・・・という苦しい練習が、ものすごく印象的でした。
短い距離の全力走を繰り返し、合計3000メートル走ると言う苦行(笑)
新二は、走りきった時、砂浜に倒れてしまい、監督に心配されます。
体中の力を使いきり、ぴくりとも動けなくなっていたのでした。
エネルギー・ゼロ。すごくないですか?そんな体験、したことないな。
知り合いに、作品を一つ仕上げると、何日か寝込むって人がいるけど…

100メートルには100の、200メートルには200のそれぞれの走り方がある。
200mを捨てて、100mに絞れば、インタハイチャンプも狙えるはずだ。
そう話す新二に、連は、どのレースも負けたくない。全部走ると言います。
それは、新二にも、インターハイ本戦の決勝を走れという事でもありました。
「勝負しよう」
この日から、ふたりは、ますます刺激し合い、高めあい、
インターハイの地区予選、県予選、南関東大会と戦っていく事になるのです。

有望な1年生が入り、4継には春高史上最高のリレメンが揃いました。
仙波、高梨のいる鷲谷高校に勝つことも夢ではないかもしれない。
でも、1年生の鍵山が故障してしまうというアクシデントもありましたが、
新人戦のメンバーで、地区と県を勝ち抜くのでした。

1年生の頃から、気になる存在だった谷口若菜には、インターハイが終わったら、告白して、玉砕しようと思っていました。新二の気持ちは、知らぬは当人同士だけで、部のみんなにバレバレでしたけど。
地区大会。長距離に転向し、3000mに出場した若菜は、ものすごいラストスパートで、県大会出場を決めました。
感激した若菜は、思わず新二に抱きつく…という青春もあって
読者としては、ここ…もっと広げてほしかったような?
抱きついた=若菜が自分を好きと、結び付けられない新二。
若菜が中学時代の憧れのひと、仙波を好きだと信じてるって、まじで?

県大会の壁は厚く、南関東大会に残れたのは、100m、200mの新二と連。
男子4継、女子では、鳥沢さんの1500mだけ。
1年生の鍵山の怪我も治り、4継を走ることになります。
今まで、1走を努めてきた根岸は、本職の400では、関東に残れませんでした。
その根岸に「全国で勝つんだ」そう言われた新二たちは、
夢の実現に向け、練習をつんでいくことになります。

インターハイ予選 南関東大会。新二も連も100mの決勝に残りました。
スタートラインについた時、新二は、自分が走るレーンを見て美しいと思います。
俺のレーン…俺の道…俺の走る道。まっすぐな道…走路が光って見えた。
何よりも好きだと思うこの道を、風を巻き起こして走り抜けた。
結果は3位。1位は連で、ふたりとも本戦への切符をつかんだのでした。

4継の決勝は、先輩たちから贈られたスカイブルーの鉢巻きをしめて臨みました。 
2走の連は、前を行くふたりをあっさりかわすすごい走りを見せます。
そして、新二は、自分たちのレーンだけを見て、全力で走り、そして。
1番最初に、ゴールテープを切ったのです。

物語はこの日で終わっています。次の日には、200mもあって、
その先には、インターハイの本戦があるのに…です。
新二は、陸上選手としては、まだまだ記録を伸ばしていく選手でしょう。
可能性の上限は、少しも見えていない。
この先ずっと、光る走路を走り続けていくのですね。

勝負には勝ちと負けがあります。
単純に、良い順位を勝ち取った事だけが勝ちではないかもしれない。でも…
県大会で敗退していったチームメイトを目の前にして、新二は思うのです。
こういう時には、ただ黙っていればいいのか? 何かを言いたがるのは
間違っているのか? 言葉で何かをまぎらわせようとするのは…
重い空気をまぎらわせたいと思う日ってありますよね。
でも。言葉が見つからない…みたいな。
沈黙は金。話すべき時と、黙っているべき時。
いまだに見分けられない未熟者・てるひなのです。

「一瞬の風になれ」は、陸上を知らないわたしにも楽しめる本でした。
2巻が1番好きかな。
3巻は、陸上のことばかりで(当たり前ですが…)ちとテンション下がりましたケド
でも。この本を読んで、人には、きっと何か…なによりも好きだと思えること、
打ち込みたいと思えることがあるんだと、改めて思う事ができました。
さらりと読みやすい文章ですので、迷ってる方、手にとってみては?

一瞬の風になれ 1 -イチニツイテ-
一瞬の風になれ 2 -ヨーイ-
1、2巻の感想記事です。良かったら、こちらもお読みになってくださいね。
一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

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  • 佐藤多佳子さん著 『一瞬の風になれ3 ドン』を読んだよ!!

    Excerpt: 佐藤多佳子さん著 『一瞬の風になれ1 イチニツイテ』を読んだよ!! 佐藤多佳子さん著 『一瞬の風になれ2 ヨウイ』を読んだよ!! の続きで最終巻です。 前の巻のネタバレになる部分もありますし、 .. Weblog: のんびり前進じたばた生活 racked: 2007-11-30 20:51