祈りの音色、永遠に 絵本『ヒロシマのピアノ』

今年も8月が来ました。
ヒロシマ、ナガサキに原爆が落とされ、そして、8月15日、終戦。
終戦から62回めの夏。広島で被爆したピアノの物語が絵本になりました。
わたしの故郷・浜松で生まれたピアノ。もしヒロシマに行っていなければ
みさちゃんの家に行っていなければ、違う運命を辿っていたかもしれません。
わたしの音色、あなたにとどけ!(絵本の帯より)
「ヒロシマのピアノ」指田和子・文 坪谷令子・絵 文研出版 2007

昭和7年(1932年)の夏のはじめ、浜松の楽器工場から、
1台のアップライトピアノが、ヒロシマに出荷され、楽器店に飾られました。
当時、ピアノは高価なものだったでしょう。
それでも。ほどなく買い手が決まりました。

ピアノを買った家族には、みさちゃんという4歳の少女がいました。
鍵盤に指をおくと、澄んだ音が出る。
みさちゃんは、その事にとても驚いて、とても心ひかれ、
お姉ちゃんと一緒に、ピアノのお稽古を始めました。
みさちゃんは、ピアノをずっと弾いていたい、ピアノの演奏家になりたい
そう思うようになっていきます。

みさちゃんが、高等女学校に上がる頃には、太平洋戦争が始まります。
お国のため…みさちゃんも、勤労動員で軍需工場に行くようになりました。
鉄砲のたまを作るために。
食べる物も着る物もなく、武器を作る金属も不足していました。
ピアノも取り上げられてしまうかもしれません。
「音楽を楽しむのはぜいたくなんじゃ…」
みさちゃんは、ピアノに抱きついて、涙を流すのでした。

運命の日がきました。
その日のヒロシマは、良く晴れた日だったそうですね。
ピアノが置かれた部屋の窓から、庭を見渡す事ができたようです。
庭は、ピアノがこの家にやってきた日と同じで、赤い夾竹桃が花盛りでした。
8時15分。

この物語は、ピアノの目線で書かれています。
ものすごい光と、熱風に襲われ、壁にたたきつけられて。
ピアノには何が起こったのか…わからなかったよです。
あたりは真っ暗になり、水を求める人の声を聞いた…気がします。
あの時。この家には、ピアノしかいませんでした。
お父さんも、お母さんも、みさちゃんも、出かけていて無事でした。
ピアノには、たくさんのガラスの破片がささっていましたが、鍵盤は無事で
音も、ちゃんと出たのです。

みさちゃんの家は、爆心地から、約1.8kmの場所にありました。
コンクリート造りだった事と、家の向きなどが幸いして、焼け落ちる事はなく
ピアノも傷だらけではあったものの、命までも取られる事はありませんでした。

8月15日。日本は戦争に負けました。戦争は終わったのです。

みさちゃんは、ピアノの鍵盤にふれてみました。音が違ってしまっています。
壁にたたきつけられて、部品がはずれたか、壊れてしまったのかも・・・
「いつか、きっと、直してあげるからね」
みさちゃんが、ピアノを弾いていると、石が投げ込まれました。
戦争に負けて、日本がどうなるかわからないこんな時に、不謹慎だ…と。
その日から。みさちゃんが、鍵盤にふれることは、2度とありませんでした。

60年後の平成17年。みさちゃんは、ピアノを手元に置いていました。
新聞記事を読んで、矢川さんにピアノを託す事に決めたのです。
古いピアノを引き取り、修理、調律し、施設などに寄付しているのだそうです。
矢川さんは、みさちゃんから話を聞き、被爆ピアノを修理していくうちに、
このピアノが、被爆して亡くなった自分のお父さんの代わりであるかのように
思えてきたのでした。

被爆したピアノの音色を、たくさんの人に聞いてもらいたい。その願いから
8月6日に「被爆ピアノ 平和コンサート」を開催しようという事になりました。
その後、被爆ピアノのコンサートは、全国各地で行われているそうです。
明日、8月14日(火)にも、港区でコンサートと朗読の会があるそうですが
さっき知ったばかりのわたしには、行く事はできません。

でも。行きたい気持ちがあれば、きっと必ず、聞きに行く事ができるでしょう。
来年の8月6日に、広島に行けるかもしれませんし。
この絵本「ヒロシマのピアノ」には、被爆ピアノで演奏したCDもついています。
平和への祈りの音色を紹介する、この絵本。
手に取ってみてはいかがでしょうか。

ヒロシマのピアノ (えほんのもり)

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