自分を低く見積もるな『一瞬の風になれ 1 イチニツイテ』

走ることは、書くことに似ている気がする。
なんとなく…誰にでもできそうで、始めてみると、実は奥が深い。
リレー種目をのぞき、孤独な戦いであるところも、書く作業と同じだ。
風になって、別の風と会話することができたら…気持イイだろうな。
「一瞬の風になれ 1 イチニツイテ」 佐藤 多佳子 講談社 2006

第4回本屋大賞を受賞した作品、3部作の1巻め。
中学までサッカー少年だった神谷新二は、高校入学と同時に
サッカーに見切りをつけ、陸上を始めます。
試合を見にきた、幼なじみの一ノ瀬連の
「ボールなんてなけりゃ、おまえ、もっと速いのに」
思いきり走るの気持ちいいぞ・・・の言葉に後押しされたのかもしれません。

一ノ瀬連は、中学時代、100mで全国大会まで行った事があるアスリートでした。
でも。その後、陸上をやめてしまったのですが、
新二と一緒に、高校の陸上部に入って、また走ることを始めるのです。
連の走りは力強く、それでいて流れるようで、しなやかでキレイでした。
そして。試合ではもっと速く、もっと力を発揮する、本物のアスリートでした。

そんな連が「やりてぇ」」とつぶやいたリレー 100m×4 4継
新二たちの高校の4継は、インターハイの地区予選を勝ち抜き、
タイムトライアルで、新二と連は、リレーメンバーに選ばれます。
がむしゃらに練習する新二と、練習嫌いの連。
練習が結果につながると思ってる新二は、連のことをもどかしく思うのでした。

新二の家族はサッカー一家でした。
両親は、熱烈なマリノスと、将来を嘱望されている兄・健一のサポーターでした。
兄は、全国大会出場間違いなしと言われている高校の中心選手でした。
新二のデビュー戦、インターハイ県予選の日は、兄の試合の日でもありました。
試合の前に、決まってお腹をこわす新二。
イベントの日には、必ずと言ってイイほど、お腹をこわすわたしと一緒だ(笑)

夕食をほとんど食べない新二を見て、健一が
「明日、試合でもあんの?」と聞きます。
新二は、明日、4継を走ること、家族には黙っていたのです。
足速いもんな…そう言った父の言葉を否定する新二に、健一は言います。
謙遜すんなよ。自分を低く見積もるなよ。少しはデカいこと言えよ。
そのくらいでないと勝てないよ。
自分を低く見積もらない。自分はダメだ…なんて言ってたら、ほんとにダメになる。
デカいこと言って、それを実現させるように立ち向かわなきゃ。

新二たちリレーチームは、県予選で、練習では出した事がないような
すごいタイムを残しますが、予選で敗退してしまいます。
新二の最初の夏は終わりました。

夏休み。他の高校との合同合宿が行われます。
それこそ死体になるまでしごかれると言う合宿に、新二は胸躍らせます。
めちゃくちゃしごかれ、食事も、残すことを許されない。
罵倒を浴びせる教員(監督?)までいる。そんな前時代的な合宿でした。
練習嫌いで、好き嫌いも激しい連は、ある夜、合宿所を逃げ出します。
なんか…覚えあるな。こーゆー逃走劇(笑)
なんとなく入っちゃった運動部の合宿がきつくて、しんどくて
飛んだのは高校1年の夏だったっけ…足に残ってる。一生消えない傷跡。

連を見つけた新二は「お前の走りを見ていたい」と言います。
もっと速いヤツはいっぱいいるという連に、新二は。
神様にもらったものを粗末にするな。もらえなかったヤツらのこと
一度でいいから、考えてみろ
神様からもらったものの大切さを、人は忘れがちですよね。
才能は磨かなければ、輝きを失ってしまう。もらえなかった人も、
磨き続ければ、もらったヤツを追い越す日もくるんじゃないかな

連は母のいるイタリアに行ったまま、試合が近づいても帰ってこなかった。
好きなコができたから、まだ帰れないという。
スポーツと恋愛は両立できないのかな・・・
連にぶちきれる新二に、同級生でリレーメンバーの根岸は
「一ノ瀬連より速くなれ」といいます。お前ならできるかもしれない…と。
神様が選んだ人間である連の走りを見て、憧れて、それでも、勝ちたい
新二は思うのでした。
勝ちたい。掴み取りたいと思うことも才能でしょう。
いくら才能があったとしても、欲しいと思わないものはつかめませんしね。

目の前の予選を通り越して、先の先、全国大会のことを考えると
くらくらする…とうい新二に、根岸は言います。
「頂上なんか見るなよ。登れなくなる」まずは、次のレースだ…と。
その通りですよね。はるか遠くを見るんじゃなくて、今、目の前にある
課題をこなしていく。コツコツ積み上げていかなきゃ…ですよね。

まだまだ速く、強くなりそうな新二と新二たちリレーチーム。
4人の力が集まって、より大きなプラスアルファを生むリレーと
孤独な戦いの個人種目。
新二は、ますます速くなるのでしょうか。連よりも速く?
挫折を味わったり、失望したりもするのかな?恋は?

夢中で好きなことをしたい。そして、勝ちたい。
力を抜くことを知らない新二を見てると、そう思います。
がむしゃらにいく…カッコ悪くてもいいんじゃないかな。
大好きなことに突き進む新二の背中は、力強くて、さわやかです。
2巻が楽しみです。

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  • いつも前を向いて 『一瞬の風になれ 2-ヨウイ-』

    Excerpt: 自分の能力の幅。最低から最高まで。その1番上が見えないのがいい。 中学まで打ち込んできたサッカーに限界を感じ、高校から陸上を始めた新二。 最初の夏を描いた、1-イチニツイテ-に続く第2巻。 天才.. Weblog: このまま・手をつないで、霧の向こうへ racked: 2007-09-06 22:15
  • 佐藤多佳子さん著 『一瞬の風になれ1 イチニツイテ』を読んだよ!!

    Excerpt: お友達の「このまま・手をつないで、霧の向こうへ」のてるひさんの 自分を低く見積もるな『一瞬の風になれ 1 イチニツイテ』を読んで すっごく面白そうと思い、予約を入れていた本が先日到着しました♪ .. Weblog: のんびり前進じたばた生活 racked: 2007-11-25 21:41