誰かのために…を選んだ少女『天山の巫女ソニン 2 海の孔雀』

自分がまわりから傷つけられ理解されないと怒っていた。
なのに、同じことを他人にしてしまった…。
夢見の才がない、巫女失格・・・と天山を下ろされたソニンの物語の2巻めです。
冒頭は、ソニンが仕えている言葉の不自由な、イウォル王子の言葉です。
どきんとさせられませんか?てるひは、しょっちゅうしちゃってる。
巻二は、何もほしがらないソニンと、なんでもほしがる人たちとの対決です。
「天山の巫女ソニン 2 海の孔雀」菅野雪虫 講談社 2007

ソニンは巫女失格とされ、家に帰されますが、沙維の国の末の王子の次女として
王宮に上がることになり、王子たちを救ったお話が巻の一です。
レビューは、運命に選ばれし…「天山の巫女ソニン」にありますので、良かったら。

王子の次女であるソニンは、月に1度の休暇で家に帰っていた時に
ソニンには知らされていなかった、イウォル王子の江南留学の話を聞きます。
帯同したら、数ヶ月間は、家にも帰ってこられません。
それは、とても淋しいことですが、ソニンは「行く」と決めていました。
王子は立場上、お役目から逃げられない。だから自分も行く・・・のだと
ソニンは、自分のことは省みず、回りの誰かの事をいつも気にかける性質でした。

王宮の書庫の番人のひとりが、職を辞す事になりました。
ソニンは、彼からあるものを託されます。
それは。一巻で、王子たちに毒を盛った張本人レンヒが書き付けた紙のたば。
王宮書庫の書物を書き写したもので、毒薬の調合方法などもありました。
レンヒは、ソニンと同じく天山から落とされた巫女でした。

イウォル王子は、江南の第2王子のクワン王子を友と慕っていました。
留学を決めたのも、クワン王子から誘われたからでもありました。
でも。ソニンは、クワン王子の事を心から信じてはいませんでした。
ソニンは、書庫の番人から託されたモノを、江南に持って行くことにしました。
きなくさい・・・ですよね。爆弾抱えての江南行き。そんな気がしました。

戦火に焼かれた、江南の都は完全に復興していました。
でも。たくさんの物乞いがいたり、庶民の暮らしぶりは豊かではないようす。
イウォル王子は、そんな庶民の暮らしを見て回りたいと願うものの
連れて行かれるのは、名所や旧跡ばかり。
ソニンは、クワン王子に相談すべく王子の邸宅を訪ねるのでした。
そこは、とうてい第2王子の住まいとは思えない、質素なものでした。

そこで。クワン王子の妹のリアン姫と出会います。
リアンは病気でした。赤ちゃんの心のまま、体だけが成長するという。
ソニンは、誰かのために・・・という生来の気質から、リアンにも慕われます。
クワン王子は、ソニンが彼女の世話してくれるなら、
信頼のおける者に、イウォル王子に町を案内させると約束しました。

ある日。リアンが、乳母の目を盗んで、邸を抜け出します。
イウォル王子は、衣もはだけたリアンの様子を見て、心の声で叫ぶのです。
「なんだ、あの女は。見苦しいにもほどがあるな」
王子はいつも。口がきけない事で、人から哀れまれ、傷ついてきました。
それなのに。病気の少女を見て、明らかに侮蔑の表情を浮かべてしまった…
冒頭の言葉は、この時に発した、イウォル王子の悲しみの言葉です。
傷ついたものにしかわからない、傷つけられ、哀れまれてきた者の痛み。
心と体の傷は、イウォル王子の優しさの源でもあるのでしょう。

イウォル王子に留学の成果を立てさせる代わりに、毒を作れ。
クワン王子は、そうソニンに持ちかけます。
邸にはありとあらゆる薬草がありました。
ソニンは、レンヒの残した手帳を参考にして、毒を作る事にします。
毒?いや・・・毒じゃなくて、薬かな
毒は薬。薬は毒。この二つは同じものからできている。
ソニンは、薬酒で王子を眠らせ、危険な薬草を持ち出し、邸を後にします。

その直後、クワン王子は、姿を消します。
王に対する謀反を企んでいた…とか、天山の巫女に毒を作らせていたとか
誰が見ていて、流したのかわからないうわさが実しやかに流れていました。
イウォル王子は、毒によって滅ばされたクワン王子の故郷を見ていました。
憧れていたクワン王子が、復讐を?
思い悩むイウォル王子に、ソニンは、毒作りを頼まれたと打ち明けるのでした。

沙維の国から、イウォル王子を案じて、兄王子がやってきた夜。
ソニンは悪夢を見ます。地価牢に囚われているクワン王子の姿を。
夢見ができない・・・と天山から落とされたソニンは、ここぞって時に夢見しちゃう。
役者が揃い、時が熟したからなのか…クワン王子のいる場所が近かったからか?
クワンを安心させるために、自らもうすめた薬酒を飲んだせいでしょうか。
でも。王子たちも、落ちこぼれ巫女の夢見だけで、
地下牢に乗り込むような、無謀なことはできませんでした。

都合よく(笑)リアンになりすましたソニンがさらわれて、
クワン王子と同じ、地下牢に入れられます。
大切な次女がさらわれた…とあっては、黙っているわけにはいきませんよね。
この機に乗じて、王子たちは地下牢に乗り込みました。

クワン王子は、気を紛らわすために、歌を歌ってくれとソニンに頼みます。
天山の巫女は歌わないのです。歌うと人は楽しくなったり、
悲しくなったりするからです。
この言葉が、今のてるひの胸にささりました。
歌には、そんな力がある。うん。ある、確かにある。

どきんとしたフレーズです。
白砂糖には酒と同じような働きがある。とりすぎると頭がぼんやりとして、
物事をはっきりとらえられなくなるのだ
白砂糖にそんな作用があるかどうかは別にして、
好きすぎるものを取りすぎたり、好きな事をし続けるのは危険だと思う。

クワン王子の謀反が濡れ衣であることがわかります。
王子を落としいれようとした張本人は第1王妃でしたが、
実行犯だった者だけが島流しにあって、この一件は決着します。
トカゲのしっぽ切りみたいで、ちょっとイヤですが、ま、現実はこんなもの?
王妃は罪の意識なんてまるでないのか、そう装ってるのか。。。
また彼女から事件が生み出される可能性もあるってことかな?

イウォル王子に、家に帰って、したいことをしていいんだよと言われて、
ソニンは、戸惑います。したいこと…好きなもの。
なにかを選んだことがなかったソニンは、自分のために選んだり、
決めたりする事ができないのです。
目の前にある仕事をこなすのは簡単なのに、
自分のことを考えるのはなんと難しいのだろう
現代人は、そんなひとが多いのかもしれません。
少なくとも…わたしは、たぶんそう。
この本は、ソニンと一緒に自分探しをする。そんな本なのかもしれません。

欲しいものもなく、困難な道ばかり選んでいると心配する友だちに、
ソニンは「不幸になる道は選んでないから」言います。
道を選んでいる!?知らず知らず、自分で自分のことを決めていた事に気づき
うれしく思うのでした。

ソニンはなにもほしがらない。なにも持っていないから、強いのかもしれません。
たくさんのものを抱えているひとは、それだけで身動きが取れない。
なくさないようにと保守的にもなる。
ソニンのようになにものからも自由でいられたら…幸せかもしれませんね。

天山の巫女ソニン 2 海の孔雀

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