運命に選ばれし…『天山の巫女ソニン 一黄金の燕』

どこにいて幸福と思うかは、人それぞれ
大地にあって、田を耕し、日々汗を流す事に喜びを見出すか
すべての煩悩と情を捨て去った場所で、静かに暮らすか
人の中にあって。人のために生きる事を幸福と思うか・・・
もてる力を、1番発揮できる場所も、人それぞれ。
「天山の巫女ソニン 一黄金の燕」 菅野雪虫 講談社 2006

昨年、講談社児童文学新人賞を受賞した、菅野雪虫氏のデビュー作。
雲をつらぬく山、天山の中腹には、12人の巫女が暮らしていました。
巫女たちは、薬草を作ったり、山を上ってくるものがあれば
その依頼を受けて、夢見を行ったりして、静かに清らかに暮らしていました。
夢見とは、薬草をたいて眠りにつき、体から魂を切り離し、遠くに飛ばすこと。
体を離れた魂は、遠く離れた場所、人が行けないような場所に赴き、
彼の地を見てきて、報告をする事でした。

巫女に選ばれる少女も、夢見によって、決められました。
ソニンは、生後まもなく、見込まれて、天山に上りましたが、
12年間、修行をしましたが、巫女の素質がなかった、見込み違いだった
そう告げられて、里に帰される事になります。
不安いっぱいのソニンでしたが、両親とやさしい姉さんに迎えられ
貧しいながらも幸せな暮らしを始めます。

村祭りの日に、あめをごちそうした事がきっかけで、友だちもできます。
物乞いじゃないから・・・と、あめを受取らなかった少女ミンに言いました。
「来年のお祭りには、あなたがわたしの分も買ってよ」
ソニンのやさしさと、清らかさがわかるやりとりで、てるひは大好きです。

ソニンたちが住んでいる沙維の国には、7人の王子がいました。
少女たちは、現代のアイドルショップで売っている生写真のように、
王子たちの姿絵を買い集め、キャーキャー騒いでいました。
でも。生まれつき口がきけない、末っ子のイウォル王子は、
華やかさがないから・・・と、少女たちには、人気がありませんでした。

そのイウォル王子の守り袋を拾った事から、
ソニンは、王子の次女として、王宮にあがる事になります。
手にふれていると。ソニンには、王子の声が聞こえたからです。
ソニンの仕事は、城内を歩き回って、働く人々の様子を見たり
話を聞いたりして、それを王子に話す事でした。

沙維の国は、巨山と江南に挟まれた位置にありました。
巨山と江南は、争いが絶えず、不穏な空気が高まっていました。
城を歩き回っていたソニンは、ある陰謀の話を聞いてしまいます。
どちらの国にも兵を送らせない方法、それは、王子たち毒を盛る事。
そして、それを負けた国のせいにしてしまおう。
王子たちがいなくなれば、沙維の国を手にできるかもしれないし
そんな恐ろしい謀でした。

ソニンは夢を見ました。王子たちが毒入りの酒を飲んでしまう…という
薬草なしに夢見をした?
王子たちは、一命は取りとめるものの・・・「死んだように」眠り続けるのです。
ソニンが立ち聞きをした事を、悪者たちは知っています。
それを逆手に取り、ソニンに罪をなすりつけようとしました。
王子たちが飲んだ毒は、天山の巫女が夢見に使う薬草だったのです。

王の側近イルギは、ソニンの潔白を信じ、策を労し、城の外へと逃がします。
ソニンは、天山を目指します。
目覚めの薬草を手に入れるために。
地下牢で、毒蛇にかまれたソニンの体は、とても弱っていました。
つらい役目です。普通、親なら止めるはず、でも、父は
役目はそれに向いたものがやればいい。いくら水や肥料をやっても、
土に合わない作物は、育たないものです。
世俗に汚れ、邪心のあるものは、通れないという天山の門を
ソニンは、やすやすと通ってしまいます。
王子たちの魂の行方を夢見によって突き止とめ、目覚めの香を授かり
王子たちを探しに出かけるのです。
ソニンは、王子たちを目覚めさせる事ができるでしょうか・・・

今回の事件は、ソニンと同じ、天山を下ろされた元巫女の仕業でした。
家に帰された彼女は、家族に受け入れられませんでした。
ののしられ、早く家を出たいと願った少女は、罪をかさね、そして・・・
そこにあるはずのない力を加えれば、必ず何か間違いが起こる。
なにかが狂ってしまうのだ。
今の世の中も、そこにあるはずのない力が加えられる事って、多いですよね
だから。なにかが狂ってしまう。
そこにあるはずのない力を、むやみに使ってはいけないのだ。
この大巫女の言葉。心にメモしておきます。

この物語は。ソニンの冒険の第一話です。
人の中で、手を汚し、涙と血を流し、巫女の力を伸ばしたソニン。
天山では落ちこぼれでしたが、また天山に戻ることもあるのかな?
今頃でてきたのか?・・・というキャラクターもあったし。
たんたんと流れるような文章は、気負いがなく、きれいでした。
次回作では、恋とかそんな話もでてくるかもしれませんね。
ソニンの美人の姉と、王の側近との恋とか。。。

天山の巫女ソニン 1 金の燕

この記事へのトラックバック

  • 誰かのために…を選んだ少女「天山の巫女ソニン 2 海の孔雀」

    Excerpt: 自分がまわりから傷つけられ理解されないと怒っていた。 なのに、同じことを他人にしてしまった…。夢見の才がない、巫女失格・・・と天山を下ろされたソニンの物語の2巻めです。 冒頭は、ソニンが仕えている.. Weblog: このまま・手をつないで、霧の向こうへ racked: 2007-05-24 19:47
  • 菅野雪虫さん著 『天山の巫女ソニン(一) 黄金の燕』を読んだよ!!

    Excerpt: 「このまま・手をつないで、霧の向こうへ」のてるひさんの 運命に選ばれし…「天山の巫女ソニン」を読んで すっごく読みたくて、図書館にて借りてきました。 菅野雪虫さんは知らない方だったのですが、昨年.. Weblog: のんびり前進じたばた生活 racked: 2007-05-31 17:09